第2話:解き放たれる狂気 小説置き場らしいですぜ(何 に戻る→
アルメス「う~ん、オウ。これは中々貴重だよ。雲の上にあるものでは、ここまで古い建造物はかなり珍しいらしいんだ。」
カン「うんうん!ホントにボロボロだよね!」
そんな会話をしながら、玄関広間を一人と一台が進んでいた。
アルメス「…あのさ、オウ。なんか他に言うこと無いの?」
カン「え?何か悪いこと言った?ごめん。」
アルメス「そうそう、分かった?今度からは気をつけるんだよ?」
カン「了解っ!」
アルメス「…でだけどさ、オウ、『ボロボロ』以外に何かないの?」
カン「え?だって、他に言うことなんかないじゃん?」
アルメス「いやいや、他にもっと表現の仕方ってもんがあるでしょ。」
カン「そう?う~ん…『朽ち果ててる』?『ボロ城』?」
アルメス「ほぼ一緒じゃん。」
それを少し遠くの物陰から見ていたカメレオン男は――
???「何だ。大して役に立たなそうな奴らだな。特にあの水色の奴…バカにも程があるわ…ゴミ以下だな。」
とても散々な評価だが、実はカン本人も『恐らく大半の人の第一印象はそんなもんだろう』と自覚している。
しかし、カメレオン男にはそれを知る由もない。まあ、知っても特に何の得にもなるわけでもないのだが。
???「もう片方はまだマシそうだが、何せバイクだしな。そんなに役に立ちそうにない。やっぱり使い捨て決定だな。」
男がそうつぶやいたとき、
アルメス「そこのおっちゃん、なんだって?バイクだから役に立たない?なんてシツレイな。」
???「!?」
アルメス「大体ね、相手を第一印象で見ちゃダメだよ。まあ、オウは例外だけど。」
カン「えー…そりゃあないよアルメス君。…で、誰と話してるの?」
アルメス「いやね、あの辺に隠れてコソコソしてる怪しいおっちゃんがいるんだよね。」
???「な、何…!?俺様のことか?い、いや、この距離からじゃ、まさか、な…」
男はうろたえる。これでも、男と彼らはそれなりに離れているのだ。
アルメス「まさかじゃないよ。いくら声を小さくしたって、全部丸聞こえだよ。」
カン「い、いや、ぜんっぜんワタクシには聞こえないのですケド??」
そこでカンが首を傾げた。
???「ま、全くだ…。何故、貴様には聞こえるんだ?」
二人に対するその答えは――
アルメス「自転車だから。」
カン「ああ、なるほど。」
???「……。ば、馬鹿にしとんのか!」
思わず男は物陰から飛び出し、
カン「あ、見っけ~。」
???「…しまった……!」
カンにあっさり見つけられた。
カメレブル「ぐ、ぐぬぬぬぬ…。まあいい。そのうちキサマらの前に出ようと思っていたのだ。俺様はカメレブル。やがてはこの全宇宙の頂点に立つ男だ!ガハハハハハハハ!」
カン「……。」
アルメス「……。」
その瞬間、辺りを静寂が支配した。聞こえるのは微かな風の音だけ。
カメレブル「ガハハハハハ!どうした!俺様の滲み出るオーラにびびってしまったのか?」
カン(…ねえ、あの人、頭大丈夫?)
アルメス(う~ん、これはかなり重症だね。オウにも負けてないよ。)
カン(いや、ワタシはさすがにあんなに酷くはないんじゃないデスか?)
カンとアルメスはこそこそとささやき合った。
カメレブル「おい!何をこそこそ話している!ははあ、さてはこの俺様から逃げる隙でも伺ってるんだな。無駄無駄!この俺様から逃げられるわけがない!」
カメレブルが勝手に解釈しているのを尻目に、またこそこそとささやき合う。
カン(なーんかホントに頭やばそうなんだけど。もはや中二病とかそんなレベルじゃない気がする。)
アルメス(今思ったんだけど、なんかオウが描いてる『秘密結社暗黒物質』のゼロに似てない?)
カン(う~ん、確かに性格は似てなくもないかもしれないけど…でもあんなデブカメレオンとゼロ様を一緒にしたくはないなあ…。)
カメレブル「おい!いつまでこそこそしとるんだ!さすがにそろそろイラついてきたぞ!」
その言葉を受け、二人はようやく(鬱陶しそうに)カメレブルに顔を向けた。
アルメス「えー…で?なんだって?」
カン「なんか、エレキブルだとか言ってなかった?」
アルメス「それはポケモンでしょ。確か、レッドブルの宣伝にきたって言ってたんじゃなかった?」
カン「ああ、そっか。『翼を授け~る~♪』」
カメレブル「どっちも違うわ!…はあ…もういい。いいか!キサマらは今からこのカメレブル様の下僕となるのだ!喜ぶがいい!」
カン「えっと…あの…、申し訳ないんですけど、僕ら、宗教とかには興味ないんで…。」
カメレブル「うるさい!…ふん。言っても分からん低能なキサマらには、この『帝王石』の力を見せてやる!」
言いつつ、カメレブルは懐から何かを取り出し、掲げた。
カメレブル「喰らえ!ガハハハハハハハ!」
それは、真紅に輝く石だった。
アルメス「…何、アレ?何にも起きな――……カン?」
カン「ぐ…く…あ…ぐああ…ああああああっっ!!」
突如、カンが苦しみだした。
カメレブル「ガハハハハハハハ!思い知ったか、この『帝王石』の力!……ん?何だ、これは?」
見れば、カンの体から真っ黒な霧のようなものが大量に溢れ出していた。
カメレブル「な、な、何だこれは!この石は人を操る石だったはず…。」
アルメス「……。えっと、何、コレ?新しいギャグ?」
そうしている間にも、黒い霧はどんどん溢れ出し、やがてカン達とカメレブルの間あたりで集まり始めた。
バタンッ
そして、カンはその場に倒れる。
アルメス「あ、オウ。大丈夫~?」
カメレブル「何だ…何だあれは……!」
集まっていた黒い霧は、次第に形を成してゆく―――カンに似た、または『星の戦士』と呼ばれる者に似た、球体へと。