第3話:紅い石と狂気と 小説置き場らしいですぜ(何 に戻る→
集まっていた黒い霧は、次第に形を成してゆく―――カンに似た、または『星の戦士』と呼ばれる者に似た、球体へと。
???「クク…ハハ…フハハハハハハハハハハ!」
その球体は、笑い声をあげたかと思うと、額の位置にギョロリと一つの黄色い目を開いた。
カメレブル「うひぃっ!」
???「やあ、アルメス、カン、そして…カメレブル、とか言ったかな?」
アルメス「そうそれ!」
そう言って、アルメスは少し黙った。
???2「カン!」
その時、誰かが走って来た。
???2「おいカン!しっかりしろよ!」
カンに似た、黒い球体だった。額には、同じような赤い宝石のようなものと、そこから立ち昇る黒い靄のようなものをつけていた。
そして、彼の後に続くように、他にも数人の球体が走ってきた。
???3「カン!大丈夫!?」
オレンジ色の者。
???4「…カン……。」
薄い緑色の者。
???5「……。」
そして最後に、黙って見ている青色の者。
???「おやおや、これはこれは。クラにエンにフウ、ミナ。全員勢揃いとはね。ククク…。」
どうやら、走って来た順に、クラ、エン、ミナ、フウというらしい。ちなみに、クラ以外にも全員が額に赤い宝石のようなものをつけている。
クラ「て…てめぇ!カンに何しやがった!!」
黒い球体に向かって怒りをあらわにしているクラに、アルメスが言った。
アルメス「あ、えっとねー、カンに何かしたのはそこのなんとかブルさん。ほら、太っちょの。」
カメレブルはクラ達が来たときから固まってしまっていたが、突如自分のことを呼ばれ、ビクリと震える。
カメレブル「なっ…お、おま…!」
クラ「お前かぁっ!お前がやったのかぁっ!!」
カメレブル「ひ、ひいぃ!お、お、俺様は何も知らん!ただ、そいつを操ろうとしただけだ!」
クラ「なんだとぉっ!」
カメレブル「ひえぇぇっ!」
カメレブルは、どんどん変わっていく状況について行けず、完全に混乱している。
ミナ「クラ。少し落ち着いてはどうだ?」
クラ「落ち着いてなんかいられるかぁっ!というかミナ、アルメス!お前らは少しはカンのことを心配しようとは思わないのかぁっ!」
ミナ「思わないな。」
アルメス「うん、全然思わないね~。」
2人とも、言葉通り全然心配している素振りがない。
クラ「何だと!お前ら何でそんなことが言えるんだ!!」
エン「そうだよ!カンが倒れちゃってるんだよ!」
アルメス「だって…ねぇ?」
ミナ「うむ。」
クラ「だってって何だよ!」
???「…ククククク、カン、どうやらそこの2人にはバレてしまっているようだねぇ。」
クラ「バレるとかバレないとか…一体何の話だよ!?」
フウ「…?………!」
フウが何かに気付いたようだ。
クラ「ん、フウ、どうしたんだ…っておわああ!?」
ガバッ
突如、倒れていたカンが起き上がった。
カン「う~ら~め~し~や~~~。」
エン「きゃあああ!カンのお化けー!」
ドカッ
そこに、エンの回し蹴りがヒットする。
カン「あべぶっ!…ひ、ひどいなあ…。でもまあ、大成功!」
クラ「お、お前…もう平気なのかよ?」
カン「うん、もうとっくのとうに。それこそ、クラ達がくるよりも前から。それより、びっくりした?へへへ~。」
クラ「……ふざけんなあああっ!」
ドゴッ
今度はクラの強烈なアッパーを喰らう。
カン「うぶっ!そ、そんなに怒らなくても…。て、ていうか、本当に焦ってたよね、クラ。ク、クフフフ…。」
クラ「笑うなっ!お前、悪ふざけにもほどがあるわっ!」
言いながら、今にももう一度カンに殴りかかりそうな姿勢をとる。
カン「うわっ、待って待って!も、もう笑わないから!…あー、っていうか、やっぱりミナとアルメスにはバレてたのかー…。」
アルメス「まあこれでも、だてにしばらく一緒にいる訳じゃないしねー。」
ミナ「うむ。なかなかの名演技だったぞ、カン。フフフ…。」
カン「いや、絶対嘘でしょ、それ!?」
そうしてカン達が騒いでいる中、黒い球体が話に割って入る。
???「さて、盛り上がっているところ済まないが……そろそろ、自己紹介をさせてもらってもいいかな?」
そこで、場の空気がすっと変わる。
ミナ「む…そうだな。我もずっと貴方のことが気にはなっていた。見る限りでは、どう見てもただたまたま通りかかった通行人…には見えないからな。」
アルメス「あー、えっとねー、その人はなんかオウの中から出て来たの。あの太っちょさんの紅い石を見せられた時に。」
クラ「ってことは…やっぱりお前が全部原因か!」
またしてもクラがカメレブルを怒鳴る。
カメレブル「ひええ!ち、違うと言ってるだろう!俺様はなんっにも関係ない!!」
クラの剣幕に怯えて必死に否定するカメレブルだが、
???「ククク、いや、関係あるさ。正確には、君の持っているその石、なんだけどね。」
黒い球体にそんなことを言われた。
クラ「…どういうことだ?」
カメレブル「…ぶはあっ!すーはー、すーはー……し、死ぬかと思った…。」
既に少しカメレブルの首を絞め始めていたクラが、カメレブルを放して首を傾げる。
カン「ああ、あの赤い石だよね。何か、"マリス・ストーン"に似てるけど…いや、まさか、違うよね~、えへへ。」
カンが冗談半分で某小説に出て来た石の名前を言うと、
アルメス「えっと、それ、たぶん間違ってはいないと思うよ。」
アルメスにあっさり肯定された。
カン「え?嘘?ホントに?」
ミナ「ああ。恐らくは、"マレボレンス・ストーン"、だな。」
なんとミナにまで肯定された。
カン「へ、へ~。ホントにあったんだ、あの石。細かいことは知らないけど。」
割と博識な方である二人にあると言われると、さすがに認めざるを得ない。
ミナ「あの石には、見た者の憎悪や悪意を高め、操る力がある。そして、どうやら様々な世界に複数存在しているようなのだ。」
アルメス「まあ、色んなとこにある分、呼び方も色々みたいだけどね~。」
石についての二人の解説に、黒い球体が続ける。
???「ああ。そして、その石をカメレブル君がカンに見せてくれたことで……この私が目覚めることができた、という訳なのさ。」
クラ「そんな石の力で目覚めたってことは…ろくな奴じゃなさそうだな、お前。」
途端にクラが敵意をあらわにする。
ミナ「貴方は…一体何者なのだ?」
ミナも、鋭い目で問いかける。
カン「お主、何奴じゃー!」
アルメス「曲者だー!であえであえー!」
…そして、カンとアルメスが全く緊張感無くその場をぶち壊す。
クラ「お前らちょっと黙ってろ!」
クラが二人を怒鳴り飛ばす。
???「ふっ、猪口才な!かつて"神風"と呼ばれたこの侍、富野瓦 恭三に敵うと思うか!いいだろう、受けて立つぞ!」
…そして、黒い球体が悪乗りする。
カン「なっ、何!?"神風"富野瓦だと!?お、おのれ小癪な!」
アルメス「ひるむなー!者どもかかれー!」
どんどんと話がそれてゆき、
クラ「…い、いい加減にしろおおー!話をこじらせんなあああー!!」
とうとう頭を抱えてクラが叫んだ。
ミナ「…さて、本当に貴方は一体何者なのだ?」
ミナが再び黒い球体に問い、そこでようやく話を元に戻した。
???「ククク、ああ、まだ質問に答えていなかったね、すまない。…で、私が何者か、だって?そうだねえ…簡潔に言うなら…」
言いつつ、黒い球体は体の周りに纏っていた黒い霧を弾き飛ばすように散らした。
そして、ゆっくりと目を開く。どす黒い赤色をした、その目を。
同時に、不気味な笑みを浮かべながら答える。
キョウ「私は…"狂気"。だから…"キョウ"、とでも名乗らせてもらおうか。」